みなさんこんにちは!

今回は「肺葉捻転」という病気とその治療についてお話します。

肺葉..捻転?聞いたことない! という方が多いと思います。

まず、わんちゃんの肺は下図のようにいくつかの「葉っぱ」のように別れています。その1つの領域を「肺葉(はいよう)」と言います。

肺のイメージ図

肺葉捻転は、ある1つの肺葉の根元がねじれて、血行障害が起き壊死してしまう病気です。

捻転が起きる理由としては、肺炎やその他の胸部疾患が関わっていることが予想されていますが、未だ不明な点の多い病気です。

胸が深い犬種(特に大型犬)に起きやすいとされますが、小型犬の子でもなる可能性があります。比較的稀な病気の一種です。
無治療の場合は命を落とすことがあり、迅速な診断と治療を要します。



当院での治療をご紹介しながらご説明していきたいと思います。

この子は4歳のトイプードルの子で、1週間以上前からの元気食欲低下と、呼吸が早いということでセカンドオピニオンで来院しました。

全身的な検査を行ったところ、「胸水の貯留」「炎症マーカーの著しい上昇」が確認されました。

採取された胸水。

胸水の分析なども行って病気を絞っていきますが、肺炎や肺腫瘍などの区別が難しいため、精密検査としてCT検査を行いました。その結果、肺葉捻転ということが判明しました。

CT検査

捻転している肺葉は壊死して感染などが起きるため、早めに取り除く必要があります。ご家族の方とご相談の上、外科的に切除することになりました。



肺葉切除は、周りに大きな動脈・静脈・神経が存在し、さらに心臓も近くにあるため非常に繊細な手術となります。

開胸した所見です。白ピンクの組織が正常な肺であり、赤黒く変色しているのが壊死した肺葉です。周りとの癒着を慎重に剥がして切除しました。

切除した肺葉の中は重度にうっ血しており、病理組織診断でも「虚血性壊死」ということがわかりました。

術後、酸素室を用いながらICUで状態を管理していき、1週間後に退院しました。

術後、酸素室での様子

壊死した肺葉を切除することで完治する子もいますが、術後も胸水が継続して溜まる場合もあります。
その場合は定期的に通院して胸水を抜去し、呼吸状態・一般状態をサポートしていく必要があります。

肺葉捻転に限らず、胸部疾患は病気の区別が難しいことがあり、精密に検査を行って確定診断をする必要があります。
また、胸部疾患は命に直結しやすいものも多いため、早めの診断と治療が望まれます。

咳をする、呼吸が荒いなどの呼吸器症状が見られる場合は早めにご相談くださいね!