こんにちは!

今回は前回の続きで、心臓病のお話をします。


前回は、小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症の仕組みや診断についてお話しました。


今回は病態が進んだ時に起きやすい「肺水腫」と呼ばれる状態と、全体的な治療法について書きたいと思います。


僧帽弁閉鎖不全症は初期の段階では無症状で、進行してくると「疲れやすい、咳が出てきた」などの症状が出始めます。


咳が出る頃には多くの子が心臓拡大まで進んでいます。


そして、さらに進行した場合、「肺水腫」と呼ばれる状態になります。


肺水腫は、その言葉の通り、「肺に水がたまった状態」のことを言います。


逆流した血液が鬱滞し、肺血管まで影響を与え、体の反応として血液の一部を外(肺)に出そうとします。
その結果、肺実質に液体がたまっていき、肺での酸素交換が十分にできず、呼吸が苦しくなっていきます。

レントゲンで以下のように確認できます。

レントゲン超音波検査で肺水腫を診断し、治療に移ります。


上で述べた様に、肺水腫になると呼吸が苦しくなり、急激に状態が落ちます
肺水腫は緊急状態であり、治療が遅れるとそのまま命を落とすことになります。


僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病で、「呼吸が荒い、苦しそう、舌色がいつもより紫」などの症状が出た場合は迅速に病院に行く必要があります。


上記のように、進行具合によって症状は変わり、最初は無症状で元気ですが、肺水腫まで進行すると命に直結します。



それでは治療法を見ていきましょう。

治療は、進行具合や各病院によっても多少異なってきますが、大きく分けると以下のようになります。
ステージングは簡易的な表現を使っています。

①軽度(逆流あり 心臓の拡大なし 症状なし)
→投薬の必要なし または 降圧剤の開始

②中程度(逆流あり 心臓の拡大あり 症状なしorあり)
→降圧剤 に加え、血管拡張剤、強心剤の追加検討

●肺水腫時
→上記の薬に加え、利尿剤による迅速な処置が必要

③重度(逆流あり 心臓の拡大あり 心不全兆候あり)
→上記の薬 + 利尿剤など

心臓内服薬の一例


基本的には内服薬で心臓を保護し、できる限り悪化を防いで元気食欲を保っていくのが目標になってきます。
定期的なチェックと適切な内服薬で心臓をサポートしていくことが大切です。


内科治療に関しては、当院で各種内服剤や緊急時のICU(酸素室)を完備していますので、いつからでも治療を行うことができます。




上記以外の治療法に、外科治療があります。


これは、僧帽弁の再建術で、弁を直接修繕し機能を取り戻す手術になります。


弁膜症による症状が強い子や、肺水腫を繰り返してしまう子が対象です。


この再建術をすることで弁の機能が戻り、薬を飲まなくても良いレベルまで改善できる子もいます。


デメリットとしては、手術できる機関が少ないこと、高額であること、手術のリスクが高いこと(近年成績が良くなってきています)が挙げられるので、よく相談してから決めていただきます。


もし外科治療を検討したい方がいましたら、当院から神奈川県内の手術可能な機関をご紹介できますので、ご遠慮なくご相談ください。





2回に渡って僧帽弁閉鎖不全症についてお話しました。
たとえ弁膜症が発症したとしても、生活の仕方を工夫したり、内服を使ったりして上手につきあっていくこともできますので、地道にサポートしていきましょう!