こんにちは!



今回は犬の膀胱腫瘍についてお話したいと思います。



皆さんもご存知の通り膀胱はおしっこを溜める場所です。
そんな膀胱にも腫瘍が発生することがあり、もっとも多いのが移行上皮癌というものです。



<症状>

血尿、頻尿などの膀胱炎に似た症状がもっとも多いです。
数ヶ月にわたって症状が持続している場合もあります。
また腫瘍が尿管や尿道を塞いでしまい、全身状態が悪くなって見つかることもあります。





<検査>

泌尿器症状を呈している場合、多くは超音波検査を使って膀胱や腎臓の状態を観察します。炎症所見はないか、結石はないか、そして、腫瘍を疑う所見はないか。
腫瘍の場合、膀胱の内側にしこりを形成したり、膀胱壁が異常に肥厚したりします。

左右の超音波所見は同じ子で、しこりを作るタイプの移行上皮癌です。
青く囲った部分が腫瘍です。



<診断>

膀胱の異常が腫瘍かどうかを判定するには以下の方法があります。

セルパック法
 →繋いだ尿カテーテルを通して膀胱を洗浄し、その洗浄液から採取された細胞を調べて悪性腫瘍かどうかを診断する方法。
 メリット:麻酔を必要としない(軽い鎮静をかけることはある)
 デメリット:集めた細胞が少なくて診断できない場合がある

尿遺伝子検査
 →尿中に含まれる細胞に特定の遺伝子変化があるか調べる方法。遺伝子変化があった場合は悪性腫瘍とみなす。遺伝子変化がなかった場合は悪性腫瘍かどうかは判定できない(悪性腫瘍の中に遺伝子変化を起こさないタイプもあるため)。
 メリット:尿の採取のみなので負担がない
デメリット:遺伝子変化がなかった場合は悪性かどうか判定できない

切除生検
 →病変の一部または全てを切除し、病理組織検査で診断する方法。
 メリット:確定診断ができる
 デメリット:全身麻酔による手術が必要なこと




<特徴>

膀胱移行上皮癌の特徴を挙げます
遠隔転移率が高い
・手術後の再発率が高い
・尿管や尿道の出口を物理的に塞いでしまう可能性がある
・4タイプに区別される(乳頭状非浸潤型・乳頭状浸潤型・非乳頭状非浸潤型・非乳頭状浸潤型) 後者の方ほど悪性度が高い




<治療>

化学療法(抗がん剤)
上記にもあるように、移行上皮癌は遠隔転移率が高く、肺などに転移して命を落とすことがあります。
診断時に明らかな遠隔転移がなかったとしても、細胞レベルで微小な転移が起きていることが予想されるため、基本的には全身治療(抗がん剤)が適用となります。
移行上皮癌に効果のある抗がん剤や消炎剤を使用してがん細胞への攻撃や転移の抑制をはかります。

外科治療
しこりを形成する腫瘍の多くは外科治療が第一選択になりますが、膀胱移行上皮癌に関してはそうとは言えません。
特徴にも記した通り、術後の再発率も高いため、外科治療の効果はまだ確立されていません。
ただし、部分切除によって膀胱炎や血尿などを改善させる目的がありますし、部分切除 + 全身治療でより長く生きられる子もいるため、よくご相談して決めていきます。
また、腫瘍が尿管や尿道の出口に発生して物理的に尿路を塞いでしまう場合は、膀胱を全て摘出する方法もあります。ただし、手術侵襲が大きく術後のケアも大変になるため、よくご相談した上で決めます。

③放射線治療
主に腫瘍が尿管や尿道の出口に発生して物理的に尿路を塞いでしまう場合に検討します。合併症などの問題があるため一般的な治療法ではありません。




<まとめ>

膀胱移行上皮癌は数ある悪性腫瘍の中でも非常に手強い相手のひとつです。
見つかって数ヶ月で命を落としてしまうケースもありますが、全身療法などで2年3年と生きられる子もいます。
少しでも長く元気な生活を送れるように治療・サポートしてあげたいですね。



何かお困りなことがあればいつでもご相談ください。