みなさんこんにちは!

世界的に新型コロナウイルスが流行してますが、少しでも早く沈静化することを願うばかりです。


さて、今回は「副腎」の話の続きです。


前回、副腎に関して全般的なお話をしました。
今回は副腎の腫瘍について、当院での治療をご紹介しながらお話したいと思います。

この子は9歳のペキニーズの女の子で、ある日血混じりの嘔吐を主訴に来院しました。


腹部の超音波検査で、左の副腎が異常に大きくなっているのが見つかりました。 この副腎が嘔吐と直接関係しているかはなんとも言えませんが、ご相談の上精査をすることになりました。


副腎にしこりができた場合、考えられるのは主に以下です
●副腎腺腫(良性腫瘍)
●副腎腺癌(悪性腫瘍)
●褐色細胞腫(悪性腫瘍)
●過形成

上記のいずれであっても、ホルモンを過剰分泌しているパターンと、ホルモンは正常なパターンと、どらちもありえます。
基本的には、確定診断は外科切除後の病理組織診断が必要になります。


嘔吐に対する治療で状態は改善しましたが、副腎の精査の為にホルモン検査CT検査を行いました。


ホルモン検査では、副腎から分泌される代表的な「コルチゾール」と「カテコラミン(アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミン)」を測定しました。


ホルモンはどれも基準値に近い数値でした。


CT検査では、しこりの発生部位、しこり内部の血管状態、しこり周囲の血管状態、他の臓器の状態、転移などの兆候があるか、などがわかり、外科手術をする上でも非常に有意義な検査です。

CT画像 副腎腫瘍の周りには大きな血管が多く存在します

この時点で、ご家族の方ともう一度今後の治療相談をしました。
ご家族の方が外科切除をご希望されたため、手術を行うことになりました。


CT画像にもあるように、副腎の周囲には重要かつ太い血管(大動脈、後大静脈、腎動静脈、横隔腹静脈など)が走っており、非常に繊細な手術となります。


また、手術中にホルモン動態が活発になるタイプの副腎腫瘍もある為、血圧や心拍などの麻酔管理もきわめて重要となります。

術中所見 副腎は深い位置にあります
切除した副腎

時間を要する手術でしたが、無事に手術を終えられました。

術後の経過も良く、数日点滴入院をした後、無事に退院できました。


切除した副腎の病理組織診断は良性腫瘍の「副腎腺腫」であり、ホッと一安心です。


2週後の抜糸も順調に終わり、副腎の治療は終了となりました。

元気に来院! 無事に抜糸も終わりました。

仮に悪性腫瘍であった場合は、切除後に追加治療が必要なケースもあります。
その際はご家族の方とご相談しながら進めていくことになります。

副腎という臓器はサイズは小さいけれど、非常に大きな役割を担っています。
前回と合わせて、副腎を少しでも分かっていただけたら幸いです。


副腎に限らず、身体のしこりが見つかった場合は早めにご相談くださいね!