こんにちは!
日中はだいぶ暖かくなってきましたね!

今回は犬の皮膚肥満細胞腫についてお話します。

<はじめに>
肥満細胞という字を見ると、太っている意味なの?と感じられるかもしれませんが、身体の肥満と関係はありません。その細胞自体が大きく膨らんでいる様から名付けられました。

肥満細胞は炎症反応や免疫反応などの生体防御に重要な細胞で、体のあらゆる場所に存在します。我々人では花粉症などにも大きく関与している細胞です。

その肥満細胞が腫瘍化したものが肥満細胞腫で、悪性腫瘍に位置付けられます。
今回は肥満細胞腫の中でも皮膚にできるタイプを見ていきます。

実際、肥満細胞腫は皮膚にできるケースが最も多く、皮膚の悪性腫瘍の中ではトップであり続けています。



<症状・悪影響>
ご家族の方が「皮膚にできものがある」「皮膚に赤い膨らみがある」と気付いて来院されるケースが多いです。米粒程度のものから拳大ほど大きくなる場合もあります。

肥満細胞は細胞の中に小さな顆粒を多く含んでおり、その物質が細胞外に漏れ出ると、皮膚炎、消化器障害などを呈すことがあります。

発生した肥満細胞腫の悪性度が高いと、無治療の場合に所属リンパ節や内臓への転移が起きる可能性がありますので、早めの治療が望まれます。



<診断>
 針細胞診検査
しこりに細い針を刺し、採取された細胞を顕微鏡で確認する方法。
負担が非常に少ない上に、肥満細胞腫であればこの検査で診断がつくことが多いです。
(顆粒を含まないタイプでは診断が難しい場合があります)

 病理組織診断
切除したしこりを顕微鏡で調べ、腫瘍の種類と悪性度を評価します。

 遺伝子変異検査
ある種の抗がん剤(分子標的薬)が効きやすいか確認します。




<治療>
外科切除が第一選択であり、根治を目指します。
イメージ図のように腫瘍細胞が拡がっていると考えられるため、腫瘍を中心に広範囲に切除する必要があります。

また、以下の場合では化学療法(抗がん剤)、または放射線療法を検討します。
・外科切除後の病理組織診断にて、悪性度が高く再発・転移のリスクが高いと予想される場合
・外科切除において不完全切除だった場合
・すでに転移が認められる場合
・外科治療が適応ではない場合
・外科治療ができない、または希望されない場合
など

同じ肥満細胞腫でも、発生した部位、大きさ、悪性度、転移状況、本人の状態などによって治療方法がかわってきますので、ご家族の方とよくご相談した上で決めていきます。


<終わりに>
皮膚肥満細胞腫は病院でも比較的多く遭遇する悪性腫瘍です。
根治を期待できる場合もしばしばありますので、早めの治療をおすすめします。

皮膚にできる腫瘍や疾患は他にもありますので、しこりなどが見つかった場合は一度病院で確認されると良いですね!