こんにちは、院長の田中です。

秋らしい季節になってきましたね!

今回は猫ちゃんの腸の腫瘍をとりあげたいと思います。



腸の腫瘍は猫ちゃんもワンちゃんもしばしば見受けられ、そのほとんどが悪性です。

腸に悪性腫瘍が発生すると以下のような症状が出てきます。

・嘔吐 ・下痢 ・血便 ・元気食欲の低下 ・排便障害 など

発見と治療が遅れると命に直結するため注意が必要です。



当院での治療をご紹介します。

この猫ちゃんは16歳の男の子で、体重減少と食欲低下があり、全身検査を行いました。

検査を進める中で、エコー検査にて以下の所見が確認されました。



上記のように腸の数カ所で明らかな異常が見られ、通過障害(腸が閉塞して消化物が通らない状態)も疑われた為、ご相談の上で、手術によって原因判定と治療を行うことになりました。

手術所見です。
※手術写真が苦手な方は飛ばしてくださいね。




それぞれの臓器を確認していくと、やはり腸の数カ所で腫瘤(しこり)を形成していました。
腸の流れを改善するためにしこりを切除し、切った断端をつなぎ合わせる処置を施しました。



以下が切除したしこりです。腸の腫瘍を疑う所見で、細胞診と病理組織診断により「大細胞性リンパ腫」と判明しました。



術後は点滴や疼痛コントロールを行い、栄養補助を少しずつ再開していきます。


このような腸の手術を行った子は3〜7日ほどの入院を経て退院することが多く、この子は4日後に退院して、治療を継続しています。


猫の腸の悪性腫瘍は「リンパ腫」「腺癌」「肉腫」などが代表的で、無治療の場合はどれも命に直結します。


今回の「リンパ腫」は「大細胞性リンパ腫」と「小細胞性リンパ腫」があり、より悪性度が高いのが「大細胞性」です。


リンパ腫は「しこりを形成する血液のがん」であり、全身治療(抗がん剤治療)が適応になります。


その子その子の状態を見極めつつ、抗がん剤治療をどのように進めるのかをご家族の皆さんと相談して決めます。



リンパ腫はシニアの子だけでなく若い子の発生例も多いため、体調が芳しくない時は早めにご相談してくださいね。