こんにちは、院長の田中です。

春らしく暖かくなってきましたね!

さて今回は「減容積手術」についてご紹介します。

あまり聞いたことがないかもしれませんが、手術の方法の一つです。

ひとえに外科手術といっても色々な目的があって手術をします。代表的なものが以下です。

①拡大切除をして根治を目指す ②最小限に切除をして確定診断(病理組織診断)を目的とする ③取れる範囲で切除して抗がん剤などの追加治療をする ④大きな腫瘍の一部を切除して減量する  など

そして今回のテーマは文字通り④です。

減容積手術の中にも「抗がん剤や放射線治療の効果を良くするために減量する」や「物理的な障害を軽減するために緩和的に減量する」などの目的があり、今回は後者がテーマになります。

実際に治療を実施した子をご紹介します。

この子は9歳のウエルシュ・コーギーで、左大腿部に軟部組織肉腫という悪性腫瘍が発生し、他院にて2度の手術を受けましたが同じ場所に再発してしまい、セカンドオピニオンで来院されました。


軟部組織肉腫は手足や体幹などに発生し、遠隔転移する確率は低いものの、局所の浸潤増大性が強い特徴があります。外科的な拡大手術が第一選択ですが、不完全切除後の再発率は高い傾向にあります。

来院された時点で腫瘍は非常に大きく増大していました。

飼い主様は当院でできる治療をご希望されたため、治療選択肢として以下を提示しました。

① 拡大切除(断脚)を検討 →腫瘍が大きい上に再発したものであるため腫瘍細胞を取りきれない可能性がある・手術範囲が広くなるので切除できても皮膚が寄らない(閉じない)可能性がある

②破裂・物理的障害を軽減するために減容積手術 →出血などの問題で少ししか切除できない可能性がある・腫瘍細胞は残るので術後すぐに増大する可能性がある

③消炎剤・サプリによる緩和ケア 

ご相談の上で②をご希望されたため、減容積手術を実施しました。

(手術所見が苦手な方は写真を飛ばしてお読みください)


再発ということもあり腫瘍と正常な組織の境界は不明でしたが、慎重に進めつつ表面上の塊を取ることができました。


術中術後と疼痛管理を徹底し、無事に翌日退院できました。


2週後の様子です。皮膚の状態も良く、順調に抜糸が終わりました。


術後半年の時点で腫瘍の再増大は認めず、サプリメントを飲みながら経過観察中です。

このように、がん治療は0か100かではなく、場合によっては「減容積手術」のような中間的な選択肢もあります。

前述したように、この手術はがん細胞は残りますので、早期再増大や追加治療についてもよくご相談しながら決めていきます。

がん治療について悩んでいることがあればお早めにご相談ください。

少しでも改善してあげられるように努めていきます。