こんにちは、院長の田中です。

これは文字通り「細胞を診る」検査で、「しこり・できもの」がどういうものかを判断する際に実施します。

当院でも頻繁に行うものの1つです。

下はぬいぐるみを使ったイメージ画像です。

少しチクっとしますが、体表のものであれば大きな侵襲が無くできるのが良い点です。

お腹の中のしこり、眼・口のしこりなどは鎮静下で行う場合もあります。


細胞診の大きなメリットは、これは「炎症性を疑います」「化膿性を疑います」「腫瘍性を疑います」というように大方の見当をつけられることです。

さらに「腫瘍性を疑う」場合は、「これは悪性を疑います」「これは良性を疑います」「現段階でははっきりしません」となり治療法を相談していきます。

腫瘍性を疑う場合、「確定診断」を得るには「切除してから病理組織診断」を行うのが通常ですが、細胞診のみで確定診断できる腫瘍もあります。

そんな細胞診の一部を紹介してみたいと思います!



<< 細胞診で確定診断が可能な腫瘍 >>


🟠皮膚にできた1cmのしこり(犬)


大型の円形細胞で、よく観ると細胞質の中に微細な顆粒が多数認められます。
これは肥満細胞と呼ばれるもので、それが無秩序に増殖しているため「肥満細胞腫」と診断できます。
肥満細胞腫は犬猫ともに皮膚の悪性腫瘍でもっとも多く発生するので注意が必要です。


🟠小腸にできた2cmのしこり(猫) 


こちらはリンパ球と呼ばれる円形の細胞が多く採取されました。正常な場合、小腸からリンパ球がたくさん取れることはないため、これはリンパ球が腫瘍性に増殖してることを意味し、「リンパ腫(消化器型)」と診断することができます。


🟠下顎リンパ節の腫れ(犬)


正常であればリンパ節には小型・中型・大型のリンパ球が一定の割合で存在するのですが、この子の場合中型から大型のリンパ球で満たされています。他の体表リンパ節も腫れており、同様の細胞診所見であったため「リンパ腫(多中心性)」と診断することができました。 リンパ腫は細胞診とともに「クローナリティ検査」なども併用して診断することが多く、それでもはっきりしない時は切除と病理組織診断へ進むこともあります。



<< 細胞診で確定診断できない腫瘍 >>


🟠腹部乳頭の1cmのしこり(猫) 


上皮系と呼ばれる種の細胞が多数認められ、1つ1つの細胞の「顔つき」は悪いと判断できました(医学的には異型性が強いと言います)。この猫ちゃんは避妊していなかったことも考慮して「悪性の乳腺腫瘍を疑う」とお伝えし、切除などのご相談をしました。この種の細胞は「細胞診で診断まではできない」ものに該当し、切除後の病理組織診断により確定診断となります。この子は実際に拡大切除を実施し病理組織診断にて「乳腺癌」という確定診断が得られました。


🟠顎にできた3cmのしこり(犬) 


大型の円形細胞が多く採取され、細胞の顔つきは悪いと判断できました。ただしこの細胞がどのような種類の細胞かを判断することは難しく「皮下または骨から発生した悪性腫瘍を疑う」とお伝えし治療相談しました。CTによる精密検査を行ったところ顎骨にも浸潤しており悪性腫瘍の可能性がさらに高くなり、顎骨も含めて拡大切除を実施しました。病理組織診断にて「扁平上皮癌」という確定診断が得られました。



🟠皮下にできた1cmのしこり(犬) 


間葉系と呼ばれる種の細胞が多数認められ、細胞の顔つきは悪いものが目立ちました。この種の細胞も細胞診で確定診断することはできず「皮下から発生する悪性腫瘍の可能性がある」とお伝えし、治療相談しました。悪性の可能性を考慮し拡大切除を実施し、病理組織診断にて悪性腫瘍の「繊維肉腫」という診断が得られました。



以上のように細胞診は重要な情報を得られるため、「しこり・できもの」を診察する上で必須です。

前述のように細胞診で確定診断まではできないことが多いですので、他の検査や外科切除も含めて進めていくことになります。

しこり・できものでご心配なことがあれば早めに相談してくださいね!