こんにちは、院長の田中です。


雨が多い季節になってきましたね。


今回は犬の乳腺腫瘍についてのお話です。


犬ではホルモンの暴露などが大きく関与しているため、特に未避妊の雌で多く発生する腫瘍です。


初回の生理がくる前に避妊手術をすれば、乳腺腫瘍の発生率が0.5%(200頭に1頭)と非常に低くなります。
よって予防可能な腫瘍とも言えます。


腫瘍は初期は小さなしこりが発生し、小さいままずっと悪さをしない場合もありますし、大きくなって周囲への浸潤や肺転移をおこして命を落とす場合もあります。


犬の乳腺腫瘍はサイズが大きくなるに従って悪性の割合が高くなることがわかっているため、腫瘍が小さいうちに切除することが望まれます。


切除したものを病理組織診断によって良性・悪性を評価し、場合によっては追加治療を検討します。


当院での治療をご紹介します。


この子は14歳の未避妊のミニチュアダックスの子で、お腹のしこりが大きくなったということでセカンドオピニオンで来院されました。


可能であれば切除して痛みを取ってあげたいというご家族の希望がありましたので、まずは全身チェックを行って全身麻酔が可能かどうか評価しました。


身体検査、血液検査、レントゲン、心機能検査などを行いましたが、大きな異常はなく全身麻酔が可能と判断しました。


十分に静脈点滴を行った上で手術を実施しました。


以下手術の写真ですが、苦手な方は飛ばしてください。


手術中・手術後は作用の異なる痛み止めを複数使い(マルチモーダル鎮痛)、できる限り痛みを感じさせないようにしています。


術後2-3日ほどで状態も徐々に回復し、無事に退院できました。


その後の経過も順調に進み、腫瘍がなくなりとても元気になったとご家族から聞いて私もとても嬉しい気持ちになりました。


縫合部も問題なく、無事に抜糸をして治療終了となりました。


切除したしこりの病理組織診断は「乳腺癌と悪性筋上皮種」と呼ばれる悪性の乳腺腫瘍でした。


ただし悪性度は低いタイプのものなので、今回は追加治療を要しませんでした。


今後も元気に長生きできるといいですね!

 

    
みなさんも しこりや腫瘍で困っていることがあれば遠慮なくご相談くださいね。