こんにちは、かなり寒くなってきましたね。
私は愛犬たまちゃんとコタツにこもっています。
さて、今回は高齢犬の肛門腫瘍のお話です。
ワンちゃんは肛門の周りにできものが発生することがよくあり、中には悪性で命に関わるものがあるので注意が必要です。
以下当院での治療を紹介します。
この子は16歳の未去勢のミックス犬で、肛門近くに大きなしこりがあるとのことでセカンドオピニオンで来院されました。
しこりはジュクジュクして出血しており、出血のコントロールは難しい状況でした。
かかりつけ医では高齢の為麻酔が難しいとのことでしたが、ご家族の方は可能であれば手術をしてあげたいというご希望でした。
当院では麻酔・手術は年齢で区切っていませんので、まずはきちんと術前検査を行って全身評価を行いました。
軽度の腎機能低下はありましたが、他に大きな問題がなく一般状態も良好であることから、術前に静脈点滴を十分に行えば麻酔・手術は可能と判断し、手術を行うことになりました。
以下は手術所見です。苦手な方は飛ばしてくださいね。
術中は作用の異なる鎮痛剤を2種類使用し、可能な限り痛みを除いて負担をかけないよう進めていきます。
写真のように2つ連なるしこりを一括で切除しました。
しこりのすぐ下側に肛門があるため、そこを傷つけないように、且つしこりを取り切れるように細心の注意を払って進めます。
最後の写真は、しこりを取り切って縫合したものです、すっきりしましたね。
肛門周囲の腫瘍はホルモンが大きく関係しているものもあるため、同時に去勢手術(精巣切除)も行いました。
術後は状態がなかなか落ち着きませんでしたが、2日目から安定し無事に退院できました。
下は2週後に抜糸で来院された時のもので、術部の皮膚や肛門に問題はなく無事に抜糸できました。
状態も安定しておりごはんもしっかり食べているとのことで、ご家族も私も嬉しい気持ちでいっぱいです。
切除したしこりの病理診断は「肛門周囲腺癌」と「肛門周囲腺腫」でした。
腺癌の方は文字通り悪性ですが、今回の切除でしっかり取り切れているという判断でした。
明らかな転移所見も認められないので、今回の治療はここで終了としました。
今回のように、大きくなった腫瘍からの出血や感染はワンちゃん本人はもちろんですが、ご家族の生活の質が著しく下がります。
できるだけ早めの対処をしてあげたいと常々思っています。
お困りなことがあればご相談くださいね!