こんにちは、院長の田中です。
今回はワンちゃんでしばしば発生する「脂肪腫」についてのお話です。
脂肪腫は肥満な子に発生する傾向があり、皮下に柔らかいしこりを形成します。
脂肪腫は脂肪細胞・脂肪組織の良性腫瘍で、その多くは悪さをしませんので経過観察することがほとんどです。
ただし、良性ではあるものの時に巨大化し、物理的な影響がでることがあるので注意が必要です。
当院での治療をご紹介します。
この子は15歳のミックス犬で、右鼠径部にある大きなしこりに関してセカンドオピニオンで来院しました。
この1ヶ月で急激に増大し、しこりが床に擦れてしまい気にして舐めてしまっているとのことでした。
実際に皮膚炎になっており、このまま増大すると歩行障害にも繋がる可能性があることから、ご相談の上で外科切除を行うことになりました。
まずは全身検査をきちんと行って全身麻酔が可能かどうか評価しました。
肝臓の数値が軽度上昇していたものの、他に大きな問題はなく麻酔が可能と判断しました。
しこりに対しては細胞診を行い、脂肪腫の可能性が高いことがわかりました。
以下は手術の所見です。苦手な方は飛ばしてくださいね。
手術で1kgを超える腫瘤を摘出しました。
病理組織診断により良性の「脂肪腫」と診断され、全て取り切れたので追加治療は要しませんでした。
術後の体調に問題はなく無事に退院できました。
このような体表の大きな腫瘍を摘出した場合、術後1-2週間は患部に漿液がたまることが多く、この子も何度か通院しながら漿液を抜きました。
2-3週後には漿液も減り、抜糸も順調に終わって治療終了となりました。
今回のように「良性腫瘍ではあるものの巨大化する」ということは時々起こりますので、しこりが急激に大きくなってきた際は早めに相談してくださいね!