こんにちは!
前回と同じく椎間板ヘルニアのお話ですが、今回は実際の治療をご紹介しながら説明したいと思います。
この子は11歳のミニチュアダックスの子で、後ろ足の突然のびっこで来院されました。
視診・触診を行い、後肢に麻痺があることがわかりました。
後肢はなんとか起立ができましたが、歩行は難しい状態でした。
前肢は問題なく、後肢に麻痺が出ていることから「胸腰部の脊髄障害」を疑うことができます。
レントゲンや血液検査を行い、骨や全身的な異常は認められませんでした。
発症の経緯や検査結果から、「胸腰部の脊髄障害」の原因として「椎間板ヘルニア」を強く疑いました。
内服(消炎剤)の効果も乏しかったため、確定診断・治療方針決定のためにMRI・CT検査を実施しました(動物画像センターにて)
CT画像
MRI画像
MRI・CT検査の結果、「腰椎1-2番間の椎間板ヘルニア(左側からの突出)」ということが判明しました。
麻痺の状態が芳しくなかったため、ご家族の方とご相談し手術を行うことになりました。
<手術所見>
骨を削って脊髄を露出 除去した椎間板物質
写真のように腰椎1-2番の間の骨を削り、脊髄が見えるように窓を開けます。その窓から脊髄を圧迫している椎間板物質を除去します。
除去した椎間板物質は2-5mmほどの大きさですが、これだけ小さくても後肢を麻痺させてしまうのですから、やはりこわい疾患だなと感じます。
術後は状態が安定したら、少しずつリハビリを行います。
人でも同様ですが、麻痺の改善にはリハビリが必要不可欠で、この子も退院後にご自宅と病院で地道にリハビリを行いました。
少しずつ麻痺が改善され、手術から1ヶ月後には歩行ができるようになりました。
今回は改善が順調に見られた子を紹介しましたが、
手術によって麻痺がどこまで改善するかはその子その子によって異なってきます。
麻痺が軽度の場合は改善が早いこともありますし、麻痺が非常に重度の場合は手術を行ってもなかなか改善が見られないこともあります。リハビリを根気よく継続していくことになります。
いずれにしても麻痺が起きた場合は、それ以上の進行を防ぐ意味でも迅速な診断と治療が望まれます。
四肢のびっこや痛みが見られた場合は早めにご相談くださいね!